市民のための薬と病気のお話
抗生物質が効かない事が有る。ほんと?
抗生物質が効かない事があると聞きました。なぜですか?
抗生物質は、青カビから発見されたペニシリンをはじめ細菌感染に非常に有効なお薬です。現在では、より正しい名称ということで抗菌薬とも呼ばれております。第二次大戦中や戦後の多くの細菌感染症、また結核に対する劇的な効果から、抗生物質を万能薬の様に思われている患者さんがときどきおられます。しかし、抗菌薬は、病気の原因になっている病原体の細菌を殺したり、その増殖を抑えたりする薬剤ですから、細菌感染症以外の病気に効くものではありません。
抗生物質(抗菌薬)は、それぞれある範囲の細菌に対して有効ですが、ウイルスや真菌に対しては効力がありません。ウイルスや真菌に有効な薬剤は、それぞれ抗ウイルス薬、抗真菌薬と呼ばれています。感冒や上気道炎は大多数の場合、ウイルスによって起こるものですから、抗菌薬が直接効くことはありません。このような場合に、細菌による混合感染に対して予防的に抗菌薬を服用することが、有効かどうかは議論があり結論はでていません。また、いわゆる水虫に代表される白癬菌症など真菌には、それに有効な抗真菌薬が必要となります。
さらに、抗菌薬の使用により、細菌がその抗菌薬に対して抵抗力を持つようになることが知られており、耐性菌の出現と呼ばれています。耐性菌の抗生物質に対する耐性獲得のメカニズムはさまざまですが、耐性菌の出現とより強力な抗菌薬の開発はいたちごっこの面があり、抗菌薬の使いすぎには警戒が必要です。最近では、多くの抗生物質に対して耐性をもつメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症が問題になっています。
(回答者:鍵谷俊文)