市民のための薬と病気のお話
薬によって投与法が異なるのはなぜ?
薬によって投与法が異なるのはなぜですか?
疾患の起こっている患部に直接、薬物を投与するための薬剤として、点眼剤(花粉症の治療薬など)、貼付剤(鎮痛・消炎薬など)、吸入剤(ぜん息の治療薬)、坐剤(痔疾患の治療薬)、塗布剤(水虫の治療薬)などの薬剤があります。これらの薬剤は適用した局所での薬物の作用を期待して作られた薬剤です。一方、全身的な作用を期待して作られた薬剤もあります。例えば、狭心症の発作の治療及び予防薬であるニトログリセリン舌下錠の場合、舌下の静脈からニトログリセリンが吸収された後、肝臓を経由することなく直接に循環血液中へ移行しますので、速やかな効果が得られます。
また、貼付剤の中にも全身作用を期待して作られた薬剤として、狭心症治療薬ニトログリセリン(商品名ニトロダームTTS、ミリステープ、ミニトロテープ、メディトランステープ、バソレーターなど)、更年期障害治療薬エストラジオール(商品名エストラダーム、エストラーナ、フェミエストなど)、禁煙補助薬ニコチン(商品名ニコチネルTTS)などがあります。
インフルエンザで高熱を出した時に頓服として解熱薬の坐剤が処方されることがあります。解熱薬の経口剤よりも薬物の吸収速度が速いので、解熱効果が早く現れるという特徴があります。理由は、薬物が吸収される直腸粘膜へ直接、坐剤として投与できるからです。経口剤ですと服用後、胃内での崩壊、溶解、小腸への移行などの過程をへた後に、吸収部位である小腸に薬物がたどり着くからです。くれぐれも誤って坐剤を口から飲まないように気を付けてください。
もちろん、全身作用を期待して作られた薬剤の代表格が錠剤やカプセルなどの経口薬剤です。食事の後に服用できますから、非常に使い勝手の良い薬剤です。しかし、服用の際には水を必要とします。電車やバスの中でちょっと飲みたいというような場合には水がないと飲めません。このような不便さを解消するために、口腔内崩壊錠剤(略してOD錠)などとよばれ、口の中で素早く溶ける薬剤が最近の流行となってきています。
(回答者:高田寛治)